Profile
マジックを作っているようで、
人の持っているものを見つけている。
―― この人、何者なんだろう?
Opening
この人は、マジックを作っているようで、
実は「人の持っているもの」を見つけている。
この人は、マジックを作っているようで、実はずっと、人の持っているものを見つけてきた。
マジシャンとして活動を始めたのは15歳。
ステージに立ち、観客を驚かせる。
それはもちろん面白かった。
けれど、いつからか興味は、
「どうやって驚かせるか」だけではなくなっていった。
誰かが持っているもの。
誰かが作ったもの。
何年もかけて積み上げてきた技術。
本人にとっては当たり前になっていること。
「これ、もっと面白くできるんじゃない?」
そこに目が向くようになった。
Kuji:Nineにとって、マジックは「完成した技術」ではなかった。
むしろ、何かを生み出すための素材だった。
人を驚かせる。笑わせる。不思議にする。その場にいる人を参加させる。
そして、ときにはマジシャンがいなくても成立する。
テレビ。映画。ドラマ。コンサート。舞台。テーマパーク。イベント。
マジックを持っていける場所は、思っていたよりずっと広かった。
だから、マジックそのものを磨き続けるだけではなく、「マジックを使って、何ができるだろう」を考えるようになった。
この人には、昔から妙な癖がある。
誰かが「これが好きなんです」と話すと、
「なんで?」
「それで?」
「それの何が面白いの?」
「もっとない?」
と聞いていく。
自分が知らない世界ほど、面白い。
その人にとっては当たり前のことの中に、本人すら気づいていない面白さが眠っていることがあるからだ。
それは、人に限らない。
商品でもいい。音楽でもいい。映画でもいい。スポーツでもいい。技術でもいい。趣味でもいい。
何かにフォーカスすると、そこには必ず、まだ見えていないものがある。
だから、その対象を見つける。
そして、掘る。
掘って、集めて、考えて、混ぜる。
Kuji:Nineが言う「匠」は、職人だけの話ではない。
商品を作っている人。楽器を弾く人。スケートボードをする人。映像を作る人。何かを研究している人。子どもだっていい。
その人が何気なく続けていること。
その人だけが知っていること。
その人の指先にしかない感覚。
その人が何年もかけて積み上げたもの。
どんな人にも、何かしらの「匠」がある。
問題は、それが本人には見えていないことが多いことだ。
だから、見つける。
そして、それを別の角度から照らしてみる。
たとえば、ある会社が新しい商品を作ったとする。
開発者は何年も考えた。何度も失敗した。細部までこだわった。
それなのに発表会では、スクリーンに商品写真を映して、「こちらが新商品です」で終わってしまう。
――それでは、もったいない。
その商品に込められた時間や情熱まで含めて、ひとつの体験にできないか。
突然現れる。思いもよらない場所から出てくる。音楽と組み合わせる。映像と組み合わせる。マジックにする。観客自身を巻き込む。
フォーカスしたものに、自分の持っている表現を浴びせる。
そうすると、同じものでも違って見える。
これが、Kuji:Nineのやってきたこと。
だから、いろんな人と組んできた。
マジシャンだけではなく、特殊メイク、衣装、アート、音楽、映像、舞台。
異なる才能を持った人間を集めて、一人では作れないものを作る。
そこでもやっていたことは、結局同じだった。
違うものを混ぜる。
一人では出てこないものが、二人なら出てくる。
三人なら、もっと違うものになる。
だから、面白い。
たとえば、自分が瞬間移動する。
「すごい」。
でも、もし自分が大好きなアーティストがやったら?
あるいは、ずっと応援している人がやったら?
驚きの大きさは、きっと変わる。
なぜなら人は、その人自身に意味を感じているからだ。
だから、マジックはマジシャンだけのものではない。
誰かの魅力を増幅することもできる。誰かを参加させることもできる。
観客を増やすのではなく、
主役を増やす。
そして、その瞬間を一緒に経験した人たちの間には、「思い出」が残る。
振り返ってみれば、ずいぶん寄り道もしてきた。
マジック。音楽。テレビ。映画。舞台。アーティスト。イベント。テーマパーク。
いろんな人と出会い、いろんな場所に行き、いろんなものを作ってきた。
一見すると、まとまりがない。
でも、本人にとっては、それほど不思議なことでもなかったのかもしれない。
面白そうなものがあれば、とりあえず近づいてみる。
知らなければ聞いてみる。
面白ければ混ぜてみる。
そして、「これ、もっと面白くならない?」と考える。
どうやら、それをずっと繰り返してきたらしい。
マジックから始まったこの考え方は、今ではマジックだけに収まらなくなっている。
AI。映像。音楽。新しいテクノロジー。
新しい道具が生まれるたびに、「これで何ができる?」と考える。
道具が変われば、表現も変わる。
だから、まだ試していないものがたくさんある。
現在は、新しいクリエイターとの活動 +ONE も始めている。
これまで出会ってきた人たち。これから出会う人たち。そして、まだ見つかっていない「何か」。
それらを組み合わせながら、次の表現を探している。
たぶん、Kuji:Nineに何かを見せると、少し面倒なことになる。
「それ、なんで?」
「誰が作ったの?」
「そこ、もっと面白くできない?」
「じゃあ、これと組み合わせたら?」
そんなことを言い出す。
でも、その先にあるのは、自分たちだけでは見えていなかったものかもしれない。
人でもいい。商品でもいい。作品でもいい。技術でもいい。
あなたが持っているものを、もう一度、一緒に見てみる。
そして、
もっと面白く。
もっとすごく。
そんなふうに、その人、そのモノ、その世界に新しい光を当てる。
それが、Kuji:Nineという人なのかもしれない。
Field Notes — 実績の島
これまでフォーカスしてきた、世界の断片。
順不同
Epilogue
「Kuji」とは、九字を切る。
古くから、九つの文字を切ることで、自分の身に結界を張り、邪気を払い、心を整えるためのものとして知られている。
でも、Kuji:Nineが切りたいのは、魔を払うための九字だけではない。
そこに一本、線を引く。
フォーカスする。
そして、その線の内側にあるものを見つけ、自分の持っているものと混ぜ、まだ見たことのない形にしていく。
九字を切るように。
ひとつ、ひとつ、線を引く。
その先に、今まで見えていなかったものが現れる。
それが、Kuji:Nine。